ベニー松山のウィズ小説『隣り合わせの灰と青春』

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 ファンタジー小説といって思い浮かぶのはなんだろう?
『指輪物語』が恐らく最もメジャー。元々ファンタジーが好きな人は『七王国の玉座』と答えるかもしれない。もしくは意表をついて『ドラゴンランス戦記』? 『ゲド戦記』は悪い意味でメジャーにされてしまったと嘆くか? 『ロードス島戦記』とくる人もいるはず。ひょっとしたら『ハリーポッター』と答える人もいるかも。
どれも最高に面白い。これらを楽しめない人にはそもそもファンタジー小説は向いてない。(まあ初心者にいきなりドラゴンランスとか指輪とかは重すぎだけど)そしてここに名前を連ねるに相応しいウィザードリィ小説が ベニー松山の『隣り合わせの灰と青春』『風よ。龍に届いているか』の2作品だ。

 基本的にグラフィックもテキストもシンプルなウィザードリィは、演出の全てはプレイヤーの想像力が頼りだ。特にこの2作品の土台になっているシナリオ#1~#3は徹底している。そういう時代に生まれたゲームだから、そうするしかなかった。
だからウィザードリィの世界を舞台にした物語は書き手がどういう妄想想像をしてプレイしていたか、ということに他ならない。ベニー松山が持っていたウィザードリィの世界は緻密で自由だ。決して多いとは言えないシステム上の決まりごとはもちろんのこと職業の特性やアライメント、モンスターの由来に至るまでサブエピソードの全てが腑に落ちる。
そうして練り上げられた極上の舞台装置の上だからこそ、キャラクター達はリアルな人間くささを発揮させて魅力的に輝く。

 『隣り合わせの灰と青春』はシナリオ1、狂王の試練場をベースにした物語だ。
冒険者たちの中でも随一の実力を持ちながら戦士としての自分に限界を感じて侍に転職するスカルダ。
悪の属性に染まり誤解を受けながらも命を懸けてパーティーに尽力する僧侶アルハイム。
武に生き、無口ながら強烈な存在感を放つ悪の戦士ゴグレグ。
ダンジョンの最奥で待ち構えるワードナの真の目的とそれに随伴するヴァンパイアロードのドラマ。
そして古代都市を壊滅させたという伝承の魔神マイルフィックが具象化するその時、それぞれの思惑が結実する。

 ウィザードリィのファンならずとも重厚な世界観と人間ドラマには圧倒されるはず。ファンならば読後は思わず訓練場に向かいたくなること請け合いだ。
しかしまだそれは早い。
物語はウィズ小説至高の名作『風よ。龍に届いているか』へと続く。

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このページは、マピロが2008年8月19日 14:11に書いたブログ記事です。

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