『迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの』読了

| | コメント(0) | トラックバック(0) この記事をはてなブックマークに追加

『迷宮街クロニクル』を大人買い

 もっとゆっくり読むつもりだったんですが、通勤途中にDSを開くのもやめて読んじまいました。『迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの』読了です。
中編ということで、俯瞰すると山場に欠けるような印象なんですが、もともと視点が頻繁に代わる群像劇である上に1センテンスごとにひとつの決着がつくので、淡々としていて良かったのかもしれない。一応真壁が主人公的な位置にいるけど狂言回しのような役割であるし。
あくまで迷宮街という舞台そのものを描いた作品なんだなと感じました。

 恩田の死が真壁に遺したものや、津差の苦悩と成長、橋本の変化といった天が加筆点としては大きな要素だったと思う。とても良かった。
超重要なエピソードに絡んでくる割に過去のテキストでは人物象がいまいち掴めなかった恩田だけど、真壁が同期としてライバル視していた唯一の人物だったのかもしれない。翠はライバルと言うには実力が違いすぎるし。
多くの死を目の当たりにしているはずだが、真壁にとっては特別な人物だったはずだ。そういう友人を失い続けることで迷宮街を抜けられなくなる。真城はそれをして「街に縛られる」と言っているんでしょう。
鈴木秀美は既に片足を囚われたように思う。

 戦士の教官である橋本の変化とは、探索者たちを鍛えることに前向きになったという点。
笠置町隆盛が素質は平凡だったと評する水上が橋本すら驚愕する実力を持ちえたということ。それに比べ、橋本は凡人には人類の剣の技は伝える術がないと諦め、何の模索も行わず探索者を鍛えることを怠り、最精鋭と呼ばれる探索者を何人も死なせていることを隆盛に叱責される。
日常にはあり得ない苛烈な環境であるが故に、ほんの数ヶ月前まで一般人だったことに関係なく素養のある人間ならば人類の剣に迫る実力を身につけることができると、隆盛はそう考えているのだろう。
実際に『青面獣』越谷は翠の上を行く戦士に成長している。

 そして教官としての殻を破った橋本に「お前は死んではいけない」と言わしめた津差こそ、迷宮街における英雄たる資格を認められたのだと思う。
その体躯の巨大さゆえの苦労や他人の勝手な期待を全て背負い込む覚悟を決めたとき、津差もひとつ街に縛られるのだろう。
そして、恐らくワードナとして迷宮の深奥に座する遠州を討ち果たすのは、人類の剣ではなく探索者たちであるべきだ。
このあたりはベニー松山『隣り合わせの灰と青春』を彷彿させるね。

 正直文章的には気になる点が多々あったり係り受けがややわかりずらかったりするんですが、内容は力強いテーマをこつこつと組み上げた人物群という土台に乗せたボリュームのある小説。
後編が楽しみで仕方ない。

そんな感じでーす。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 『迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの』読了

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.studio-wiz.com/mt/mt-tb.cgi/129

コメントする

このブログ記事について

このページは、マピロが2009年4月22日 13:00に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「今週の『バクマン』『アイシールド21』」です。

次のブログ記事は「『HELLSING』最終巻を買いました」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.14